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⬜︎目次⬜︎
- はじめに:なぜ私たちは自分を過大評価してしまうのか
- 1章 「できている自分」の正体
- 2章 インナーチャイルドからのSOS
- 3章 幻想が崩れる瞬間
- 4章 インナーチャイルドとの和解
- 5章 本当の「できている」とは
- おわりに:幻想を手放し、本物の自分を生きる
はじめに:なぜ私たちは自分を過大評価してしまうのか
「私は大人だから大丈夫」「自分のことはわかっている」ーこうした思い込みを持ったことがない人はいないでしょう。私たちの多くが、無意識のうちに抱いている幻想かもしれません。
私たちの日常は、「できる人」であることを求められる環境です。成果と効率が重視され、「自分らしく生きる」と言いながらも、結局は社会的に評価される「自分らしさ」を演出することに疲れています。知らず知らずのうちに、「できている自分」を作り上げ、虚像を維持するためにエネルギーを注いでいるのです。
説明できない空虚感、順調に見える人生なのに満たされない、心の奥底で感じる孤独感。これらは単なる疲れやストレスではなく、インナーチャイルドからのサインかもしれません。

インナーチャイルドとは、私たちの心の中に生き続ける子どもの頃の自分のことです。純粋さ、満たされなかった欲求、心の傷を抱え、ありのままで愛されたいという願いを持った存在です。しかし、大人になった私たちは、「もう子どもではないから」と言って、インナーチャイルドの声を無視し、否定しているのです。
その結果生まれたのが、「できている自分」という巧妙に作り上げられた幻想です。この幻想は一見頼もしい存在に思えます。他者からの評価を得て、社会的な成功を手にし、安心感を与えてくれます。その代償として、本当の自分との繋がりを見失っています。
多くの人が陥りがちな「自分はできている」という幻想の正体を解き明かし、抑圧してきたインナーチャイルドの声に耳を傾けてみましょう。
1章 「できている自分」の正体
私たちが「自分はできている」と感じる時、表面的には自信に満ちているように見えても、その奥には深い不安や怖れが潜んでいることがあります。この幻想はどのように作られているのでしょう。
「できている自分」の根底にあるのは、完璧主義という強固な信念です。「いい子でなければ愛されない」「失敗してはいけない」という言葉や雰囲気の中で育った人たちは、無意識のうちに「完璧でなければ価値がない」という思い込みを内面化していきます。
完璧主義は私たちを成功に導くように思えます。しかし、その裏では失敗への怖れが渦巻いています。完璧主義者の自信は不安定な基盤の上に築かれているのです。
この「できている自分」は他者からの承認を得るための虚像なのです。「頼りになる」「しっかりしている」という言葉を聞く旅に、安心感と満足感を得ます。この承認の快感を得るために、他者の評価なしに自分の価値を感じられなくなります。

承認に依存した自己価値は不安定です。常に他人の目を気にし、相手が望むであろう「できる人」を演じなくてはなりません。自分の感情や欲求は二の次になり、自分が望んでいることがわからなくなります。
また、他者との比較による相対的な安心感という要素もあります。「あの人よりはマシ」「周囲と比べて自分はできてる方」など、自分の位置を確認して安心を得ようとします。他者を下に見ることで自分を支える方法は、健全な人間関係の構築を妨げ、結果的に孤立を深める原因となります。友情や愛情は対等で相互的な関係の中でしか育たないのです。
これら三つの要素、「完璧主義」「承認欲求」「比較による安心感」が複雑に絡み合って、「できている自分」という幻想を作り上げています。この幻想は、短絡的には私たちを守り、社会的な成功をもたらしてくれるかもしれません。しかし、長期的に見ると、本当の自分との繋がりを断ち、深い満足感や充実感から遠ざけてしまう危険性を孕んでいます。
2章 インナーチャイルドからのSOS
「できている自分」という幻想の下で、インナーチャイルドは傷つき、苦痛を訴えています。それらは身体の不調、感情の変化、無意識の行動パターンとして現れます。
身体の不調はさまざまなパターンがあります。息苦しさを感じる、手が震えるという反応は、子どもの頃の恐怖体験が蘇っている可能性があります。
感情面では、些細なことで涙が出る、理由のない不安、突発的な怒りや寂しさに襲われるなど。こうした感情の波は、長年抑圧してきた本来の感情が表面化している現象です。

感情を抑圧し続けると、自分の本当の気持ちがわからなくなります。「今、自分は何を感じているのか」「何が好きで何が嫌いなのか」という基本的な自己認識が曖昧になります。感情は私たちの内面を知るための重要なコンパスであり、それを失うことは人生の方向性を見失うことにも繋がります。
ネガティブな感情を抑圧し続けると、ポジティブな感情も感じられなくなります。心を閉したような状態になり、全ての物事が色褪せてしまいます。「なんのために生きているのかわからない」という虚無感に襲われることもあります。
また、現代社会では「強い人」が評価される傾向にあるため、無意識のうちに「強い自分」を演出しようとします。強い自分を演じ続けると、本来なら受けられるはずのサポートや愛情を受け取れなくなり、孤立無縁の状態に陥りやすくなります。
そして、自分の弱さや不完全さを受け入れられなくなり、弱みを見せることに怖れを感じるようになります。ますます、「強い自分」の演出に依存するようになる悪循環に陥ります。
インナーチャイルドは私たちに、「本当の気持ちを大切にして」とSOSを出しているのです。長年無視していたインナーチャイルドの声を受け入れることから、自己受容と癒しの道が始まります。それが「本当にできている自分」への第一歩となるのです。
3章 幻想が崩れる瞬間
巧妙に作り上げた「できている自分」という幻想も、日常生活の中で必ず綻びが生じる瞬間があります。この瞬間こそが、自分と向き合うための重要なサインです。
幻想が崩れやすいのは、親密な人間関係の中です。表面的な付き合いでは通用する仮面も、深い関係では本性が出てしまうことがあります。相手から批判や拒絶を受けた時、「できている自分」の仮面は一瞬で剥がれ落ちます。「見捨てられる恐怖」「愛されない不安」が一気に表面化し、自分が思っているほど成熟してないことに気付かされます。

こうした反応を受け止め、長年抑圧していた本来の感情を表現することが大切なのです。自分の感情を受け止めきれず、自己否定に陥ることはやめなくてはいけません。
大きなプレッシャーの中で予期せぬ困難に直面した時、普段は隠している姿が現れることがあります。危機的な状況では、完璧主義の仮面を維持できないのです。
このような反応を恥ずかしいものとせず、自己理解の機会として受け止めていきましょう。
更に深刻なのは、孤独感です。「できている自分」を演じ続けると、表面的には順調なのに、満たされないという状況に陥ります。これは、本当の自分を隠し続けていることの結果です。
仮面をつけて人と関わっている限り、相手が愛しているのは「演じている自分」であって、「本当の自分」ではありません。本当の自分を知られたら、嫌われるだろうという不安を抱えることになります。
この孤独感は、特に成功を収めている人ほど深刻になることがあります。周囲から羨望の眼差しを向けられ、なんでも持っていると思われながらも、空虚感や虚しさに苛まれているのです。これは、外的な成功と内的な充実感は必ずしも一致しないのです。
インナーチャイルドは、「ありのままの自分で愛されたい」という欲求を持っています。幻想が崩れる瞬間は痛みを伴いますが、それは本当の自分を取り戻す苦しみなのです。この痛みを受け入れ、そこから学ぶことができたとき、私たちは真の成長の道を歩むことができます。
4章 インナーチャイルドとの和解
「できている自分」という幻想の下で抑圧してきたインナーチャイルドと和解することは、自己受容への重要なステップです。
まず、自分の弱さや不完全さを受け入れることからはじめます。長年にわたって「強さ」「完璧さ」
を重視し、弱さを否定していた場合、困難を伴うかもしれません。弱さを受け入れることは、諦めや敗北ではなく、真実を認める姿勢なのです。
弱さを受け入れた自分を責めず、自己批判をやめ、「人間らしい自分を受け入れた」「今日は疲れているから無理せず休もう」「今の自分にできることをやってみよう」など、優しい言葉を使うようにしましょう。インナーチャイルドはずっと優しさを求めていたのです。

完璧主義から脱却し、不完全な自分を認めることは、インナーチャイルドとの和解において最も核心的なプロセスです。そこで大切なのは、自己対話する習慣を身につけることです。厳しい言葉を浴びせるのをやめ、温かい励ましの言葉をかけるようにすることで、インナーチャイルドは心を開いてくれるでしょう。小さな努力を認め、頑張ったという経過を大切にし、褒めてみましょう。
インナーチャイルドのメッセージを受け入れることは、成長を諦めることではありません。健全な自己受容があってこそ、本当の意味での成長が可能になるのです。現在の自分を受け入れながら、もっと良い自分になろうとするバランス感に意味があるのです。
成長の動機も見直してみましょう。「人に認められるため」「他人に負けたくない」という外発的で競争的な動機ではなく、「自分がより幸せになるため」「自分らしい人生を生きるため」という内発的で協調的な動機を大切にしていきましょう。
長年の習慣や思い込みを変えるには時間がかかります。時には後戻りしたような気持ちになることもあるでしょう。しかし、少しずつでも自分に優しくして、不完全な自分を受け入れていくことで、心の奥に眠っていた本当の強さや喜びが蘇ってきます。これこそが、「本当にできている自分」への道筋なのです。
5章 本当の「できている」とは
「本当にできている」とはどういうことなのか、理解する必要があります。それは、表面的な成功や完璧さとは異なります。静かな安定感と深い満足感のある豊かな状態なのです。
本当の「できている」とは、自己認識の精度が高いということです。これまで、「できている自分」が他者の期待や社会的基準の虚像だったとすれば、今度は現実的で建設的な自己理解を築いていく必要があります。
自己認識を深めるためには、自分の感情や反応を客観的に見つめることが重要です。「何が自分を緊張させているのか」「何が自分を逃げ腰にさせるのか」「何が自分のエネルギーを奪い、何が自分を生き生きとさせるのか」ーこのように内面の動きを批判することなく、観察するのです。

自分の得意なことと苦手なことを率直に認め、完璧主義の罠から抜け出し、現実的で前向きな判断をしていきましょう。「この分野は苦手だから、誰かを頼る」「この分野は得意だから活かそう」など、効率的で健全な判断ができるのが望ましいです。
他者との関係において、健全なバランスを保つことも重要です。支配でも依存でもなく、互いを尊重し合う対等で相補的な関係です。自分の限界を知り、難しいことは断っても良く、それが相手に対して拒絶的にならないことを目指しましょう。健全でバランスが取れた状態であれば、信頼関係が育まれていきます。
「知らないことを知らないと言える」「間違いを認める」「他者から学ぶことを喜ぶ」「新しい挑戦を楽しめる」という発想は、真の強さと柔軟性の表れと言えるでしょう。固定化した自己像にとらわれず、常に成長し、変化し続ける自分を受け入れます。
完璧になることは最終目標ではなく、「良い人間になり続けること」「幸せで充実した人生を送ること」が真の目標であり、この過程には終わりがありません。
この道を選択し続けることで、人生を大切なものにできるのです。
「できている」とは、到達点ではなく継続中のプロセスの中に居続けることです。インナーチャイルドを大切にしながら、的確な自己認識を持ち、他者と健全で相互的な関係を築き、謙虚に学び続けて、成長し続けるーという生き方こそが、「できている人生」なのです。それは、表面的な完璧さはなくても、深い満足感と静かな幸福感をもたらしてくれます。
おわりに:幻想を手放し、本物の自分を生きる
「できている自分」という幻想を手放すことは、大きな不安や恐怖を伴うかもしれません。それは当然のことです。長年にわたって頼りにしてきた仮面を外し、慣れ親しんだ防御システムを解体するのですから。一時的に、脆弱な気持ちになるのは自然の反応です。
しかし、その不安の向こうには、想像をはるかに超える開放感が待っています。もう完璧でいる必要はなくなります。他人の期待に応えるために、自分を犠牲にする必要もありません。自分の弱さや不完全さを隠し、疲弊する必要もなくなります。ありのままの自分で深く呼吸できるのです。
本当の人生とは、完璧さではなく、不完全さの中にこそ宿るものです。欠けがあるから光が差し込み、傷があるから他者の痛みがわかり、弱さがあるから本当の強さが際立ちます。
「できている自分」という窮屈な鎧を脱ぎ捨てて、軽やかで自然な自分として人生を歩んでいきましょう。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
山田 結子
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