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⬜︎目次⬜︎
権力依存とは、何に依存しているのか
「権力依存」と聞くと、地位や肩書きへのこだわりを思い浮かべるかもしれません。しかし、その本質はもう少し深いところにあります。権力依存とは、地位そのものへの執着というよりも、「権力を持っている自分にだけ価値がある」という、条件付きの自己価値感への依存なのです。
なお、ここでは権力に依存し、自己価値と一体化した状態を「権力依存」と呼びます。

会社での役職、家庭内での主導権、誰かに対する影響力。子どもの頃から「ありのままの自分」を認めてもらえる経験が少なかった人ほど、こうした外側の評価を「自分の価値そのもの」として取り込んでしまいます。これが権力依存の土台になります。
これは、企業の管理職やリーダーのような立場の人だけに起こることではありません。「自分がしっかりしないとうまくいかない」と主導権を握り続けてきた人、誰かの相談役として頼られることに存在意義を見出してきた人にも、同じような構造が見られます。立場や役割の形を変えながら、「条件付きの自分しか認められない」という心のあり方が、さまざまな場面に現れてくるのです。
たとえば、ママ友グループの中で「まとめ役」を担うことで安心していた人、夫婦関係の中で「自分が決めないと前に進まない」と感じていた人も同じです。その役割を失った時に初めて、自分がその立場にどれほど依存していたかに気づくことになります。
このような条件付きの価値観は、子どもの頃の家庭環境から生まれてきます。子どもの意見よりも親自身の意向が常に優先される関係だったり、親のコントロールや支配が強かったりした場合、子どもは「ありのままの自分でいては安心できない」と学習してしまいます。すると、何かの役割や能力を身につけることで自分の存在を守ろうとするようになる。これが、大人になってからの権力依存の種になっていくのです。
「自分」と「権力」が一体化する仕組み
ここで鍵になるのが、インナーチャイルドという視点です。インナーチャイルドとは、子どもの頃に満たされなかった感情や思い込みが、大人になった今も心の中に残り続けている部分のことです。
例えば、子どもの頃に「何かがうまくできた時」「何かの役に立った時」にしか褒められなかったとします。すると本人も気づかないうちに、「ありのままの自分には価値がない」という思い込みが心の奥で育っていきます。そして大人になってから、地位や役割、誰かへの影響力という「力」を手に入れることで、その空虚さを埋めようとするのです。
ところが、「権力」と「自分」が一体化してしまうと、「本当の自分」との境界が曖昧になっていきます。一体化したまま権力を失うと、自分という存在そのものが消えてしまうような感覚に陥ってしまうのです。
この一体化が起きていることに、本人はなかなか気づけません。「自分は仕事ができるから大丈夫」「自分は頼られているから大丈夫」と感じている間は問題に見えないものの、その立場や役割がなくなった瞬間、突然問題が表面化します。事前に気づいて手当てをすることが、とても難しいのです。立場や役割を失った後に大きく動揺してしまうのは、決して弱さの証ではなく、「権力」と「自分」の一体化からきているのです。
権力を失った時に起こる心理的な反応
権力的な立場を強制的に失ったとき、共通するプロセスが見られます。
まず、強い不安や焦燥感です。「コントロールできている」という感覚が安心の土台になっていたため、それを失うと、目の前の世界が不確かで危険な場所のように感じられるようになります。
次に、怒りや被害者意識が生じてきます。「不当な扱いを受けた」という感覚に意識が向かいやすくなり、現実と向き合うよりも過去への執着が強くなる場合があります。

さらに、周囲の人間関係の変化も追い打ちになります。権力を持っていた時期に近づいてきた人たちが離れていくこともあり、「自分には価値がない」という思い込みが、実際の出来事として現実になってしまうのです。
これは、友人関係といった、より身近な関係性の中でも似た形で現れることがあります。たとえば、相談役として頼られていた友人関係が、自分が弱さを見せた途端に距離を置かれてしまう。誰かの問題を解決してあげる立場でいる間は関係が続くのに、頼られなくなった瞬間に関係が薄れていく。こうした経験をした人も少なくないはずです。
こうした現象は、「権力を持つ自分」という条件付きの自己価値の上に積み上げてきた関係が、土台から揺らいだ時に起こる自然な反応だと理解しておくことが大切です。崩れたのは、あなた自身の価値ではなく、条件の上に成り立っていた関係性の方なのです。
なぜ、これほど大きなショックになるのか
物質への依存や特定の人物への依存は、「対象」と「自分」を分けてとらえることもできます。しかし権力依存の場合、対象が「自分自身の存在価値」と直接結びついているため、失った時の衝撃が他の依存よりも大きくなりやすいという見方があります。
これは、自己肯定感が「条件付き」で形成されてきた人ほど強く現れる傾向があります。「成果を出せたから」「役に立てたから」「誰かより上だったから」価値がある、という条件のもとで生きてきた人は、その条件が崩れた瞬間、自分の存在そのものが崩れたように感じてしまいます。
ただし、ここで起きている崩壊感は、決して悪いことだけではありません。むしろ、これまで目を向けずに済ませてきた「本当の自分には価値がない」という思い込みと、正面から向き合うきっかけにもなり得るのです。
これまで「条件」によって覆い隠されていたインナーチャイルドは、立場や役割という覆いが外れたとき、初めて表面に現れてきます。これは苦しい体験ですが、同時に、本当の自分と出会うための入り口に立ったということでもあるのです。
本当の自分を取り戻すためにできること
権力という外側の支えがなくなったとき、必要なのは、新しい権力を急いで探すことではありません。内側にある自己価値の土台を、少しずつ育てていくことです。

最初の一歩は、「何もしていない時間」に慣れることです。誰かの役に立つこと、人から認められること、何かを管理することをやめる時間を作ってみましょう。最初は落ち着かない気分になるかもしれませんが、その気持ちを感じても動かずにいることが、練習になります。
何もしていない時間を作れるようになったら、その時間に「楽しい」というエッセンスを取り入れてみましょう。心がワクワクする、嬉しい、面白いと感じることに時間を使ってみるのです。しばらくは罪悪感が出てくるかもしれませんが、負けずに続けてみてください。
慣れてきたら、過去を振り返る時間を持ちましょう。子どもの頃、「権力を持っていないと自由がない」「権力があれば安心できる」と思っていた理由を探してみてください。そこには、辛い気持ちや体験があったかもしれません。思いつくまま、書き出してみましょう。
権力を失うという体験は、大きな痛みを伴います。けれど、焦って行動しなくても大丈夫です。まずは「何もしなくていい時間」を積み重ね、自分の軸を改めて育てていきましょう。
役割や立場がなくても、ただそこにいるだけで価値があると感じられるようになること。それは時間がかかるプロセスですが、確実に、本当の自分と再びつながっていくための一歩になります。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
山田 結子
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この記事を書いた人について
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「自分には価値がない」という思い込みを手放し、本来の自分を取り戻すサポートをしています。ヒーラー&リーダーの山田結子です。
インナーチャイルドの癒しに携わって約20年。ヒーリングとリーディングを組み合わせたセッションで、多くの方の「自分らしい生き方」への一歩をご一緒してきました。
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